小説家、榎木洋子の日記。仕事に関するもの、 そうでないもの。
今年一年の感謝を込めて
一日早いけどクリスマスの贈り物です。

私は小説家なので、作品を使ってみんなにちょっとしたお礼をしようと思ったら、やっぱりそのキャラを使って何かのシーンを書くしかなくて。
うん、だからそれするね。
全員を書くのは無理だから、代表して「龍と魔法使い」のタギ。
続きから読んで下さい。

――――――――――――――――――――

 北から吹く風がタギの黒い髪をくしゃっと混ぜていった。
 見あげると空はどこまでも青く、雲ひとつなかった。
「おーい、吹き飛ばす雲がないからって俺の髪で遊ぶな」
 南へ向かう風に向かって、のんびりと声をかける。
 道の向こうで木立がざわざわと揺れたのは、北風の侘びなのか、笑った証なのか。 
 快晴だか冬間近で、頬に当たる空気はすっきりと冷たい。

 ――楽しそうだね、人間の魔法使い。
 すぐ横の大木の枝に座った精霊が話しかけてきた。
「そりゃあな、家へ帰るんだからな」
 ――ほう、家とはどこだ?
「俺が帰りたい場所。俺を待ってる奴らがいる場所。どこかは教えねーよ」
 ――用心深いな、人間の魔法使い。
「伊達にあんたらと付き合ってねーよ。じゃあなモミの木の旦那。雪や雨から森の奴らまもってやれよ」
 ――もちろんだとも。それが葉を落とさない我らの務めであり喜びだ。
 その言葉を聞いたタギは行きすぎた所からクルリと回れ右した。杖で肩をトントンと叩きながら大木を見上げていたが、やおらモミの木に向かって歩き出し、根っこのひとつをコツッと杖で叩いた。

「おい、ちっこい水の精霊と大地の中の奴ら。ここでケンカすんの止めてやれ。止めねーなら火で焼き尽くすぞ、おまえらだけ」
 すると木の根の中からモゾモゾとちびっこい精霊たちが顔を出した。
 ――だってこいつら私のドレスを汚そうとするんだもの。
 ――ドレス見せびらかしに来て水巻き過ぎなんだよこのバカ。
 水の精霊と木の根に栄養を送る大地の精霊が、互いを指さして言い分を言う。
 タギはそんな話をするかれらを――――まったくどうでもよさげに、足の先で乱暴になぎ払った。
 ――なにすんだよー。
「うるせえ。ケンカしたからおまえら焼く」
 ――うわー! 待って待って待って!
 ――きゃーいやー、私無くなっちゃう!イヤー!
 精霊たちはわたわたと逃げまどう。それをタギはひょいひょいと猫の子のようにつまみ上げた。
「おめーら、反省したか? バカなケンカしてる間に見ろ、そこの根っこ、栄養が行かなくてダメになりかけてんだろ」
 タギが示した箇所は確かに根の所嫌な変色を見せている。
 ――ううう。ごめんなさい。
「俺に謝ってどーする」
 タギは精霊たちをポイッと放り出すと、問題の木の根っこに軽く杖を当てて、修復の手助けをする魔法を使った。
 ――大判振る舞いだな、人間の魔法使い。
 枝の上から精霊が下りてきて地面に立った。

 ――おかげで歩く時に足に痛みを感じなくて済みそうだ。
 精霊の手の中には、タギが放ったちまい精霊たちがちゃんと保護されていた。
 ――ごめんよう。
 ――私も……意地張ったわ。
 しゅんとなった二人に、モミの木の精霊はよしよしと頭を撫でてやる。
 ――これからも私の木の世話を頼むよ。
 ――うん。今、やる。魔法使いの魔法助けてくる。
 小さい精霊たちは腕からぴょんと飛び降りると、タギが魔法を使って微光を放つ根っこに手を当てて一生懸命さすり始めた。
「よお、どうだい?」
 タギはモミの木の精霊をふり向いて聞いた。 
 ――ああ、もうずいぶんマシになった。これならここに座って日がな一日旅人に話しかけて暇をつぶさずとも、辺りを歩き回って『小さいの』の面倒もみてやれそうだ。
「そりゃよかった。俺がわざわざ足を止めた甲斐があった。次ここ通る時にもいちいち話しかけられたら、うるさくてかなわねぇからなあ」

 ――うちに帰るって言ってたのに、またすぐ出かけるのかな。
 ――馬鹿ね、追い出されるに決まってるでしょ。あんな乱暴なやつ。
 ちまい精霊たちがヒソヒソと言いあう。
「……聞こえてンぞコラ」
 剣呑な顔つきでタギが言うと、精霊たちはピシッと背筋を伸ばしてせっせと樹の根のお世話を始めた。
「さあて、道草くっちまったがこれで行くか」
 ――人間の魔法使い。礼といってはなんだが、これを持っていくといい。
 モミの木の精霊は大木を見あげて手をさしだした。
 すると、上の方でざわざわと梢が鳴ったかと思うと、精霊の手の上にポトリと落ちてきたものがあった。輪になった紐のついた平たい木の人形だった。
 ――冬至の祭りに木に飾るものだよ。大昔道に落ちているのを旅人が見つけて茶目っ気で私の首にかけた。あれから何十年もたったが、だれも取りに来ないのでね。私が譲り受けていいだろう。
 何十年も風雨にさらされていたはずなのに人形の汚れは少なかった。描かれた模様も鮮やかなままだ。きっとこの精霊が守っていたのだろう。
 精霊はそれをタギに差し出した。
 ――幸運のお守りだ。
 タギはいいやと断ろうと思ったが、愛嬌のある人形の笑顔を見て気が変わった。
「そんじゃ遠慮なく。……いい匂いがするな。同じモミの木から作られてんのか」
 ――実を言えば私の先代の木からだ。百年前に斬り倒された立派な木だったよ。
「だったら、家でも冬至の祭りの日に窓に飾っておくか」
 ――そうするといい。良い年越しをな、人間の魔法使い。 
「ああ、そっちもな。良い冬ごもりを、か」
 もらった人形を荷物の中にしまい、最後に高いモミの木のてっぺんを見あげると、タギはきびすを返して道に戻り歩き出した。
 どちらもさよならは言わなかった。ただの通りすがりだからだ。
 それでもモミの木の病は癒え、タギの荷物には幸運のお守りが増えた。
 

 日の当たる道は白くまぶしく、ときおり微風が吹いてタギの髪を流す。
 歩くリズムに合わせて外套のすそが跳ね、道に落ちる影を元気に踊らせる。
 空は青かった。
 歩く道の先にはなつかしい我が家が待っていた。
 
【タギの寄り道 モミの木のある道で】

| 08:29 | 短編の小説 | comments(11) | trackbacks(0) |
わ〜い♪久しぶりのタギ!!
ありがとうございます〜〜。
相変わらず、口が悪くてぶっきらぼうで。
だけどとってもやさしくって♡
以前のままの大好きなタギでした♪
榎木先生、なんだか気持ちがほこっと暖かくなるようなクリスマスプレゼントありがとうございます!
| おおひめ | 2010/12/24 09:14 |
Twitterから来ましたー!
寒い日に、ほこほこするお話をありがとうございました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

| 天堂 | 2010/12/24 20:06 |
タギーっ(*´▽`*)
久しぶりのタギが相変わらず口が悪くて、それなのにやっぱり優しいタギで、とても幸せです!
いつのタギなのかなぁと思いを馳せつつ、風来坊なくせに帰る家を大事に思ってるタギにほっこりしました/////
素敵なクリスマスプレゼント、ありがとうございます!!!
| いち | 2010/12/24 20:26 |
はじめまして!

嬉しいクリスマスプレゼントをありがとうございます☆

ほっこり暖かい気持ちになりましたo(^-^)o
| くみちょ | 2010/12/25 00:20 |
タギ・・!すっごく嬉しいです!!
すごいクリスマスプレゼントいただいちゃいました(≧▽≦)
ありがとうございます!!!!
| み@ | 2010/12/25 00:46 |
とてもとても懐かしい心地です。
タギたちの物語に出会ったころを思い出しつつ…

また読み返してみよう。
| muu | 2010/12/25 12:30 |
ステキなクリスマスプレゼントをありがとうございます!
久しぶりにタギに会えて、嬉しくて幸せすぎて泣きそうになりました。

あ、年末に出る龍の新刊まであと少しですね!
コバルトではまだ読んでないので買いに行きます。
楽しみ〜(*^▽^*)
| uesugi | 2010/12/26 20:11 |
素敵なプレゼントありがとうございます!
言葉の端々から、いろいろ時代背景を想像して楽しみました。連日読み返しては、すがすがしい気分で仕事に行っています。
では、よいお年を
| 吉 | 2010/12/26 23:28 |
榎木先生のリダーロイスワールドは、出版され、かなり経ってから追っかけて読んできました。私もタギの人柄が、大好きです。今日、見つけて、ニマニマして読んでしまいました。ありがとうございます。又、出会えるのを楽しみにしています。インフルエンザには、お気を付け下さい。(私はやッと直りましたよ)
| sanpototoro | 2011/01/21 18:20 |
はじめまして。
久しぶりのタギで泣きそうになりました!!!
龍と魔法使いは大好きで、受験勉強と称して毎日図書館へ通い、よく読んでいました。
来年は是非レンにも会いたいです。笑
| モニカ | 2011/01/28 17:27 |
こんにちは。
赤ちゃんにおっぱいをあげながらネットを泳いでてふと思い立ってここに来たら、
懐かしいタギに会えました。
思えば中学時代リダーが大好きで由香里ちゃんのようにあの世界に行ければいいのに、、、と夢見ていた女の子は
なんともう2児の母になりました。
当時、由香里ちゃんは高校で私よりお姉さんだったのに、、、
本を読む暇もない日々だけど、
大事な本棚にしまってあるリダーシリーズ(もちろん龍と魔法使いもありますよ!!)読み返そうと思いました。
(読み過ぎて紙がセピア色です。)
そして
新シリーズも出たのですね。
さっそく本屋に買いに走ります。
ここでタギに会えたことで思い出しました。
私はやっぱり榎木さんの描く龍の世界が大好きです!!
いくつになってもこの「わくわくする思い」変わりませんね。
今この腕の中で眠ってしまった小さなお姫様と姉姫さんがいつか書棚で見つけてわくわくする気持ちを育んでくれたらいいなと思いました。
では長々とすみません。
| マカフィ | 2011/02/05 16:14 |









 
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