コミケのお知らせ2

  • 2013.12.26 Thursday
  • 13:54
こんにちは!メリクリでした。
もう行くつねるとコミケットですね。
風邪もほぼ完治したし、お祭り話目一杯楽しむ所存です。
さて、先日書いた冬の新刊の試し読みを書きます。
文庫で9ページ分くらいあります。
続きからどうぞ。

 
 【バード】Bird
 鳥。あるいは恋人の呼び名
 遙か昔、詩(うた)を唄って街を旅していた吟遊詩人たち

 けれど今の時代、
 バードといえば別のものを指す
 それは白い服を着た「夢の子供たち」だった


「真太郎、なにやっとるか、いまんとこを右じゃ!」
「うっせえじじい、ナビじゃこっちのが空いてんだよ」
「遠回りだろうが。ええい、人の力にばかり頼りおって、この未熟者が!」
「免許取りたてだっていってんだろ!」
「わわわ、前見ろ真太郎ー!」
「てめえがよそ見せさて……えええええっ?」
 キーッ。ガガガ。ドカーン。ガシャン。

 祖父――じじいを車に乗せて事故った。
 自損事故で、ガードレールと鉄製のゴミ箱がおしゃかになり、俺の車はみごとに横転。
 俺はエアバックに顔を強打されて悲鳴を上げて、車の自動装置が「事故です」の警告音とランプを辺りにまき散らし、どっかの犬がワンワン吠えて、自転車に乗った気のいい若者がベルを鳴らしながら「大丈夫ですかー」と声を張りあげ、しかしその間じじいは無言だった。
 車から救急隊に引っ張り出されたあとも、ずっと無言だった

 じじいは、例の奇病になっちまってた。

 バード

  俺と鳥太郎の十日間



二十二世紀の現在。
世界に奇病が蔓延していた。眠り病だ。
それにかかると身体は眠り続け、やがて死に至る。
発明された特効薬は、使用すると何故か患者の精神が(魂が?)身体を離れ、治療の間バードとして生まれ変わる。

ふしぎなことにそれは必ず子供の姿となり、選ばれたパートナーのもとへやってくる。

そして唄うのだ。

愛の言葉を。

  * *

「最近居眠りばっかすると思ったら。何が年のせいだよ。病気だったんじゃねーか、ばーか」
 俺は病室のじじいに言った。身体にいっぱいチューブをつけて、周りの器機につなげられてて、ピクリとも動かない。寝てるんだから当然だ。
 かくいう俺は打撲と擦り傷。
 やたらヒリヒリしてるが命にまったく別状ない。
 はあ……とため息ついて病室をあとにする。
 脚の打ち身をさすりながらよたよた歩いて、ナースセンターによってぺこりと頭下げて、出たら隣の薬局で自分の分の薬をもらって帰る。
 バスで帰る。
 免許は取りあげられなかったから、運転はできる。けど、車は修理中だし、なにより運転する気になれなかった。
 冬の天気のいい日だった。バスを降りて、家の途中にあるコンビニで昼の弁当を買う。
 他にスナック菓子もカゴに放り込む。二十歳の俺にはジャンクフード卒業はまだまだ先だ。
 その横の和菓子コーナーで、ふらっと手が伸びて大福をカゴにいれた。レジで弁当を温めてもらってるとこで、大福買ってどうすんだと気づいた。
 大福はじじいの好物だ。
 病院に持ってってもじじいは寝っぱなしで食べられないし。枕もとにおいとくか? いやいや、それじゃお供えだろ。縁起でもない。自分で食うしかないよな。あんま餡子とかは好きじゃねーけど。

「はーい、はいはい」
 家に帰って玄関開けたとこで俺はバタバタと室内へ走った。リビングにおいてある電話が鳴ってたんだ。電話が鳴ってるとなんで取る前から返事しちまうんだろうな。
「もしもーし」
「真太郎! あんたなんで携帯電話にでないのよ。何回かけたと思ってるの」
発言で分かると思うけど母親からだった。
「わりぃ、携帯切ってた。病院行ってたから。じいちゃん見舞って、今帰って来たとこだよ」
「そうだろうと思ったけど、ずっと繋がらないと心配するじゃない。で、どうなのよ、おじいちゃん」
 母親が声を潜めて聞いてきた。
 ここで軽く我が家の説明をする。うちは両親と姉とじじいと俺の五人家族。けど両親と姉は二年前から海外で暮らしてる。別にじじいと折り合いが悪いってんじゃない。親は仕事で、姉はたまたま親の行った国の美術を学んでて、大喜びでついていった。
 俺は両親にそうせず日本に残った。
 大学決まったば っかだったし、第一俺まで行ったら、じじいがひとりきりになっちまうだろ。
 以上、説明終わり。電話に戻る。
「どうもこうも寝てたよ。TVフォンで先生も説明しただろ。眠り病は半月〜一ヶ月は眠りっぱなしだって。特効薬も打って、あとは目ぇ覚めるのを待つだけだって」
 ごくごく稀に目覚めることなく、眠ったままの患者もいるけど……。そのことはわざわざ言わない。
 すると母親は焦れったそうに、そうじゃなくてと言った。
「ほら、あっちの方よ。そっちに行ってないの? あの例のあれ……バードは」
 怒濤の指示語のあとでようやくバードと言う。軽々しく口にできない気持ちは俺にも分かる。
「いんや、きてねーよ。母さんたちのほーじゃね? そっちの暮らしを心配してたからさ」
「きてたら聞かないわよ。おじいちゃんが眠ってもう三日よね。別のところに行っちゃったのかしらね、おばあちゃんみたいに」
 母親は深いため息をついた。
「とにかくもうしばらく、窓は開けてなさいよ。家を締め切らないで」
「へーへー俺だって前にホストのテスト受けたから知ってるよ」
 電話の子機を肩と耳の間に挟み、リビングの窓を開けに行く。当然は開け忘れてた。うう、冬の風がつめてぇ。
 ところでホストってのはバードが見える能力をもつ人間のこと。昔ばあちゃんが同じ病気にかかったとき、家族全員が受けさせられた。その結果、俺の家族は全員ホストの資質ありって分かった。つまりハードが自分ちに来たら、全員ちゃんと見えるってこと。
 けど、ばあちゃんは、というかバードはうちにこなかった。バードは孤独を感じる人のもとへ行きやすいっていうから、うちには来ないだろうなって、みんなうすうす気付いてた。三世代、家族六人で暮らしてたからね。
 ただ、今回は……。
 いやまあ、別にさびしかないけど。
 母親はじじいが目覚める頃に戻るから、それまでお見舞よろしくねとか、ごはんちゃんと食べなさいとか、定番の台詞を言って電話を切った。時計を見ると、けっこう時間がたってた。
「あーあ、弁当また温めなきゃ」
 めんどくせえなあと思いつつ、冷めた飯より熱い飯のが旨いに決まってるんで、レジ袋から弁当を回収し、台所のレンジにつっこんでおまかせ温めボタンを押した。
 じじいも、どーせばあちゃんみたいに他(よ)所(そ)んちに行ってんだろな。俺とは最近ケンカばっかだったし。
「うるさいんだよ。帰りが遅くなるのは、男のつきあいだっつーの」
 案外じじいも、親んとこ行く途中で、孤独な未亡人にふらふら引きよせられてるかもしれない。
 ほどなくレンジがチンと鳴った。
「あちちっ」
 弁当箱の端っこ持って、テーブルにのっけようとふり向いた。そしたら。

 あいつがいた。

 ちっちゃくて、やたら可愛くて、白い服を着た、七歳くらいの子どの姿。教わった通りのあの姿。
 それが、うちの台所にいたんだ。
「おまえ……バード?」
 俺がこわごわ話しかけると、白い子供はにこにこと笑った。
台所の椅子につかまって足をブラブラさせて(プールで縁に掴まってバタ足してるとこを想像すればバッチリだと思う)、こっち見ると、なんでだろう……。
 底抜けに幸せそうな笑顔になって、宙を飛んで俺に抱きついて言ったんだ。

「好きー!」

 俺はあっけにとられた。
「フヘッ」
 変な声がでた。
 それからバードが落っこちないように、そっと抱きしめた。


(冬コミ新刊、バード、試し読み終わり)
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